2011年12月16日金曜日

二人の天才の一年

天才と呼ばれる人は数多い。しかし、正に超ビッグな天才と呼ばれるメジャーリーグのイチロー、そして、ホースレース界の超ビッグ、武豊騎手の一年がまもなく終わろうとしている。

武豊騎手は先週の阪神ジュベナイルフィリーズに一番人気のサウンドオブハートで参戦。大外枠の不利にもかかわらず、当日の出走まで、ファンはサウンドオブハートを一番人気に押した。

そのファンの願いの中には、武豊騎手が積み上げてきた、栄光のG1記録を継続させて上げたい、いや継続する姿をみたいという希望が幾分かは含まれていたに違いない。

勿論サウンドオブハート自身が強い馬で、期待できる馬であったことは認める。しかし、大外枠を引いてもファンはその夢を持ち続けて彼を支持した。

それほど、武豊騎手のこれまで積み上げてきた記録は卓越しており、余人が辿れる数字ではない。昨年の落馬負傷以来、長く戦列を離れ、ようやく秋に復帰。2011年を新たな気持ちで迎えて好調だった春。あの悪夢のような東日本大震災が日本を襲った。

「このような時に本当に競馬をしてもよいのか、、、」としばし、武豊騎手は悩んでいた。しかし、やると決まってからは、いかに被災地の人々に競馬の存在を役立たせるかを真剣に真面目に考え行動していた。

彼の一年の足跡をみれば、自身の騎乗というより、騎手会長として、日本の競馬界を牽引してゆく重責を背負って行動していた姿がはっきりと見えるだろう。そして彼自身に何ができるのか、このような厳しい国情の中で日本における競馬界のあり方は、、、、など、真剣に悩んでいたようにみえる。

そんな彼の強い強い責任感、リーダーとしてのプライド、そして怪我から復帰した彼の不屈の闘志に、24年連続の華麗なG1勝利の喜びを味わってほしくて、ファンは発走の瞬間までサウンドオブハートを一番人気に押し、エールを送り続けたのだろう。

夢は皮肉にも、彼の最も愛したディープインパクトの愛娘、ジョワドヴィーヴルの完勝という形で終わり自身は3着に破れてしまったが、、、、。しかし武豊騎手自身もなぜサウンドオブハートが一番人気を続けたのか、ファンの暖かいエールを十分に感じ、自身のホームページでその感想を述べている。

イチロー選手にしても今年は本当に苦しい一年だっただろう。先回のWBCでその責任感の強さから身体を壊すほど、集中して日本代表の要の自分を意識し続けた。今年は自身の活躍で被災地日本を励ましたくて励ましたくて、仕方がなかったのではないだろうか。その微妙な焦りが天才のバットに微妙なずれを与えたのかも、、、というのが大方の想像である。

ゴルフにしても、野球にしてもホースレースにしてもアスリートのメンタル面の微妙なずれは結果と成って表れる。

イチロー選手も今年は無冠に終わってしまった。武豊騎手もしかり。すでに年末のグランプリには出走予定がなく、今後阪神で騎乗するとのこと。従ってすでに今年のG1は期待できず、記録は23年連続で途切れそうだ。

しかし、この二人は、むしろ記録が途切れることによって、更に一皮むけ、新たな姿を我々に見せてくれるのではないだろうか。本当に名実ともに頂点を極めた二人が、新たな姿で心から自己との挑戦を楽しみ続ける姿を、、、、。自分自身と会話しつつ、、、、。

ファンとしては今、日本のホースマン(オーナー、生産牧場、厩舎関係、報道記者)すべての皆さんとともに考えたい事がある。野球WBCにイチロー選手が参加しないのは、何とも寂しく、興味が半減する。(勿論いつかはその日がくるだろうが、、、)

同じく、ファン投票で選ばれる夢の祭典有馬記念に武豊騎手が参戦しないのは、やはり華がない。G1記録が途絶えることより、このことの方が何だかファンには釈然としない。スマートファルコンで交流G1では鮮やかな逃げ切り勝ちをし、トランセンドを封じて、まだまだ華が一杯の超一流騎手。日本のホースマンの共通の宝ではないのだろうか、、、。

有馬記念では、馬ばかりでなく、ファンは騎手の手綱捌きにも夢をみているのだ。イチロー選手が日本の野球界のみならず、世界の野球ファンの宝であるように、、、、。紅白歌合戦のような年末恒例のグランプリ有馬記念にやはり名物騎手、武豊の参戦は付き物だと思っているファンは案外多いのではなかろうか、、、、。残念!!

来年の二人の天才の新たな活躍に期待しよう!!