2009年5月19日火曜日

思いがけない訪問(続編)

先日、4月末から5月初旬にかけてのナッシュビル、メンフィス、ケンタッキーへの家族旅行について、少しご報告した。その際、息子の思いがけない一言で、毎年、伝統のあるケンタッキーダービーとオークスが開かれるケンタッキー州ルイビルのチャーチルダウンズ競馬場へ行き、第135回ケンタッキーオークスを観戦したことをお伝えした。今日はその続編をお伝えしよう。

今更ながらわかったことだが、チャーチルダウンズ競馬場で5月1日、我々は幸運にももの凄い騎手と馬にめぐり会っていたのだ。そして、知らず知らずに歴史の証人の一人となって奇跡的な出来事を観戦していた。

そう、我々の眼前で、見事、第135回ケンタッキーオークス優勝馬となったレイチェルアレクサンドラ(レイシェルアレキサンドラとも呼ばれている)と、この第135回ケンタッキーオークス、翌日の第135回ケンタッキーダービー連勝と言う離れ業をやってのけたC.ボレル騎手。

レイチェルアレクサンドラは、その後、5月16日に、2009年アメリカクラシック第2戦、プリークネスステークスにC.ボレル騎手騎乗で参戦。何と何と並みいる一流牡馬を一蹴し、牝馬として85年ぶりにこのプリークネスステークスまでも制覇してしまったのだ。

2着に入ったのは、アメリカクラシック3冠レースの中でも別格、3歳馬の最高峰レースと呼ばれるケンタッキーダービーの勝ち馬、マインザットバード。

C.ボレル騎手は自身が乗って勝った今年のダービー馬を2冠目の相棒に選ばず、85年も牝馬の勝ち馬が出なかったにもかかわらず、ケンタッキーオークス勝ち馬の牝馬レイチェルアレクサンドラを選び、見事、栄光の2冠目も制覇。

牝馬として、牡馬クラシック3冠の2冠目、プリークネスステークスに挑戦するだけでも凄いのに、85年ぶりに見事栄冠を獲得したもの凄い牝馬を、なんと我々はオークス当日、ノー天気にターキーのもも肉やビザを食べながら、ビール片手にワアワア言いながら、見ていたのだ。

我々がこの目で見ていたケンタッキーオークスのレイチェルアレクサンドラは、135回のケンタッキーオークス史上、2着馬との着差20馬身4分の1という最大着差で勝利を獲得。今後、なかなか破られることはないだろうと思われるこのもの凄い着差の記録。

そもそもケンタッキーオークス出走馬はすでにかなりの水準揃い。スピードとスタミナ自慢が出走するオークスのレースで、20馬身以上の着差は奇跡的。今後この記録を破るのは容易ではなく、レイチェルアレクサンドラは長くアメリカ競馬史上に名を刻み続けることだろう。

C.ボレル騎手はケンタッキーダービー、プリークネスステークスと今年のアメリカクラシック3冠レースの2冠を制覇したが、過去に同一騎手が違う馬に騎乗して、アメリカクラシック3冠レースの2冠を制覇した記録はなく、史上初の快挙とか。素晴らしい記録である。

アメリカのすべてのホースマンにとって、クラシック最高峰のケンタッキーダービーを勝つことが夢。この1冠だけ勝っても、種牡馬としてお墨付きをもらい、将来の栄光の種牡馬の座が約束されたようなもの。

例外の一頭としては、アメリカでは種牡馬にならず、日本に渡って大活躍し、アメリカ中のホースマンを悔しがらせた大種牡馬、サンデーサイレンス。日本のホースマンにとって幸運だったのは、サンデーサイレンスは幼少の頃大病し、遺伝子に影響を与えたかもしれないと疑われ、アメリカでは種牡馬としての価値を疑問視されたこと。

1989年に夢のケンタッキーダービーをぶっちぎりで圧勝し、有り余る能力を見せたにもかかわらず、アメリカでは種牡馬として誰も評価せず、ただ一人社台グループ(北海道のノーザンホースパークなど多くの牧場で大成功)の吉田善哉氏のみが惚れ込み、日本に連れて来たお宝馬。

レイチェルアレクサンドラは今年、その最高峰のケンタッキーダービー優勝馬のマインザットバードを破り、プリークネスステークスに牝馬として85年ぶりに勝っちゃったんだから、さあ大変!!

3冠目は2週間後にニューヨーク州、ベルモントパーク競馬場で開かれる歴史あるベルモントステークス。今から行方を大いに注目。アメリカのクラシック3冠レースは日本とは違い、レースの間隔が短く、馬の体調を管理するのが難しいので、近年3冠馬は出ていない。

今年はもう、レイチェルアレクサンドラが3冠を阻止したばかりではなく、牝馬として牡馬を蹴散らしてしまったので、勿論、アメリカクラシック3冠馬誕生の夢は消えてしまった。でも今後、名牝レイチェルアレクサンドラが牡馬達にどんな争いを挑むか、大いに夢は膨らむ。

85年ぶりに牝馬が、、、、と書くと、直ぐに思い出すのが日本の女帝ウオッカのこと。ウオッカが64年ぶりに牡馬を蹴散らし、日本ダービーを制覇したときには、日本中が大騒ぎ。今年のドバイデューティーフリーでは、いまだに陣営が敗因をつかめぬ原因不明の直線失速で7着に敗退。すでに限界説すらささやかれていたそうだ。

しかし、5月16日海の向こうのアメリカで、レイチェルアレクサンドラがクラシック3冠レースの2冠目で牡馬を蹴散らした翌日(実際には時差があるので同日)、5月17日の日曜日、日本の2008年最強馬として年度代表馬の栄誉を獲得したウオッカは久々に彼女らしい、圧倒的な強さでマイルの女王決定戦、G1ヴィクトリアマイルをレースレコードで制覇した。この走破タイムは自己のマイル記録を0秒3更新しているんだから、決してまだまだ限界などではない。

彼女はこの一戦に勝利し、牝馬賞金獲得額歴代1位となり、名牝エアグルーヴを超えた。そして、東京の府中の杜、東京競馬場でG1、4個目を獲得し、同一競馬場G1単独最多勝利記録を樹立した。

彼女はこの勝利で過去にG1を5勝して牝馬として最多勝記録保持馬だったメジロドーベルに並んだが、内容的にはあえて牡馬混合のイバラの道を選んだ上での5勝。ウオッカの方が数字的には同じ5勝でも、その重さが違うことはすべてのホースマンが認めることだろう。

騎乗した武豊騎手が最終追い切り後記者の質問に、「もし、今回ウオッカで勝てなかったら、自分自身が競馬不信に陥り、へこみます。」と答えていたほど、名手にはウオッカの体調に手応えがあったのだろう。

残念ながらすでに谷水オーナーは、7馬身差というマイル戦過去最大着差でマイルの女王に輝いたウオッカの年内引退を発表。勿論お母さんになるウオッカも大切だが、これまで武騎手が「牝馬を超えた名馬」と表現していた牡馬顔負けの豪快な走りを観られなくなるのかと思うと残念無念。

その豪快な走りを観られるのも今年一杯。ウオッカ!!貴女はどこまで名馬の記録を伸ばせるのかな??85年ぶりにアメリカで快挙を果たした海の向こうのレイチェルアレクサンドラ。64年ぶりに牝馬の枠を超えて日本人を熱狂させたウオッカ。

どちらも牡馬混合のクラシック3冠レースで歴史に残る豪快な走りをみせてくれた女傑2頭。夢をありがとう。怪我しないで最後まで頑張ってね!!そして、いいお母さんになってね!!

ところで、日本の牝馬クラシック3冠レースの第2戦、オークスの発走もいよいよ5月24日の日曜日に迫ってきた。スペイン語で「素晴らしい景色」と名づけられたブエナビスタ。

いよいよ1冠目桜花賞制覇に続いて、2冠目オークスも制覇すべく最終準備中。女ディープインパクトという名誉ある称号を贈られたお茶目なお嬢様。女帝ウオッカに続けるように、頑張れ~~~!!

今入ったニュースでは、オークスで牝馬クラシック2冠制覇できたら、ブエナビスタは世界最高峰の凱旋門賞に挑戦するプラン有りとか。女ディープインパクト、3年前のディープの無念を晴らせるか?!