2011年12月27日火曜日

さようなら絶景

何だか淋しい。何だか悲しい。名残惜しい。もっと、、、、。そう思わせる有馬記念が終わった。強い強いオルフェーブルに、それはそれで感動し、力強い世代交代をまざまざと目に焼き付けた。

2012年は間違いなくこの父、母ともに内国産馬のサラブレッド「オルフェーブル」が、時代をリードしてゆくのだろう。「絶景」と呼ばれ、夏冬4回続けてグランプリ人気投票第一位に選ばれた類いまれなる牝馬の後を受けて、、、、、。

残念ながら、ブエナビスタはその最後を絶景のままで終わらせることは出来なかった。勿論これから、偉大なる母として、後世に残る素晴らしい跡取りを産み出していくのだから、「お疲れさま!!おめでとう!!無事で良かったね!!」と明るく送り出してあげるのが妥当なのだろう。

分かってはいる。しかし、やはり女傑と呼ばれ、一世を風靡したウオッカとは違い、たおやかでひたむきで可憐なイメージなのに、素晴らしい瞬発力で、牡馬をなぎ倒す何とも言えない魅力をもう一度みたかった、、、、。惜しい、悔しい、儚い夢の終わりに納得出来ないで未練たらたらの自分が居る。

粉雪舞う中山のターフを静かに引かれて歩く彼女の姿がカクテル光線の中で何とも淋しげで、胸に重く残り、爽やかではないのだ。勿論いつも素晴らしいサラブレッドの引き際には、何らかの心が残る。しかし、ブエナビスタの放った数々の光線は、凄い、強い、女傑などというより、なんだか芸術的な一本の光の矢のように見えたのは私だけだったのだろうか。

すでに半妹のジョワドヴィーヴルが立派に阪神ジュベナイルフィリーズを勝ち、血統的な跡取りは生まれている。オルフェーヴルという世界を視野に入れられる立派な三冠馬も誕生した。でもこの淋しさはかつて感じたことがない。

可憐で、可愛い花「なでしこ」をイメージさせてくれたブエナビスタ。その素晴らしい絶景を私は忘れない。ありがとう、そして、元気でね!! Au revoir!!ヴエナビスタ!!

2011年12月16日金曜日

二人の天才の一年

天才と呼ばれる人は数多い。しかし、正に超ビッグな天才と呼ばれるメジャーリーグのイチロー、そして、ホースレース界の超ビッグ、武豊騎手の一年がまもなく終わろうとしている。

武豊騎手は先週の阪神ジュベナイルフィリーズに一番人気のサウンドオブハートで参戦。大外枠の不利にもかかわらず、当日の出走まで、ファンはサウンドオブハートを一番人気に押した。

そのファンの願いの中には、武豊騎手が積み上げてきた、栄光のG1記録を継続させて上げたい、いや継続する姿をみたいという希望が幾分かは含まれていたに違いない。

勿論サウンドオブハート自身が強い馬で、期待できる馬であったことは認める。しかし、大外枠を引いてもファンはその夢を持ち続けて彼を支持した。

それほど、武豊騎手のこれまで積み上げてきた記録は卓越しており、余人が辿れる数字ではない。昨年の落馬負傷以来、長く戦列を離れ、ようやく秋に復帰。2011年を新たな気持ちで迎えて好調だった春。あの悪夢のような東日本大震災が日本を襲った。

「このような時に本当に競馬をしてもよいのか、、、」としばし、武豊騎手は悩んでいた。しかし、やると決まってからは、いかに被災地の人々に競馬の存在を役立たせるかを真剣に真面目に考え行動していた。

彼の一年の足跡をみれば、自身の騎乗というより、騎手会長として、日本の競馬界を牽引してゆく重責を背負って行動していた姿がはっきりと見えるだろう。そして彼自身に何ができるのか、このような厳しい国情の中で日本における競馬界のあり方は、、、、など、真剣に悩んでいたようにみえる。

そんな彼の強い強い責任感、リーダーとしてのプライド、そして怪我から復帰した彼の不屈の闘志に、24年連続の華麗なG1勝利の喜びを味わってほしくて、ファンは発走の瞬間までサウンドオブハートを一番人気に押し、エールを送り続けたのだろう。

夢は皮肉にも、彼の最も愛したディープインパクトの愛娘、ジョワドヴィーヴルの完勝という形で終わり自身は3着に破れてしまったが、、、、。しかし武豊騎手自身もなぜサウンドオブハートが一番人気を続けたのか、ファンの暖かいエールを十分に感じ、自身のホームページでその感想を述べている。

イチロー選手にしても今年は本当に苦しい一年だっただろう。先回のWBCでその責任感の強さから身体を壊すほど、集中して日本代表の要の自分を意識し続けた。今年は自身の活躍で被災地日本を励ましたくて励ましたくて、仕方がなかったのではないだろうか。その微妙な焦りが天才のバットに微妙なずれを与えたのかも、、、というのが大方の想像である。

ゴルフにしても、野球にしてもホースレースにしてもアスリートのメンタル面の微妙なずれは結果と成って表れる。

イチロー選手も今年は無冠に終わってしまった。武豊騎手もしかり。すでに年末のグランプリには出走予定がなく、今後阪神で騎乗するとのこと。従ってすでに今年のG1は期待できず、記録は23年連続で途切れそうだ。

しかし、この二人は、むしろ記録が途切れることによって、更に一皮むけ、新たな姿を我々に見せてくれるのではないだろうか。本当に名実ともに頂点を極めた二人が、新たな姿で心から自己との挑戦を楽しみ続ける姿を、、、、。自分自身と会話しつつ、、、、。

ファンとしては今、日本のホースマン(オーナー、生産牧場、厩舎関係、報道記者)すべての皆さんとともに考えたい事がある。野球WBCにイチロー選手が参加しないのは、何とも寂しく、興味が半減する。(勿論いつかはその日がくるだろうが、、、)

同じく、ファン投票で選ばれる夢の祭典有馬記念に武豊騎手が参戦しないのは、やはり華がない。G1記録が途絶えることより、このことの方が何だかファンには釈然としない。スマートファルコンで交流G1では鮮やかな逃げ切り勝ちをし、トランセンドを封じて、まだまだ華が一杯の超一流騎手。日本のホースマンの共通の宝ではないのだろうか、、、。

有馬記念では、馬ばかりでなく、ファンは騎手の手綱捌きにも夢をみているのだ。イチロー選手が日本の野球界のみならず、世界の野球ファンの宝であるように、、、、。紅白歌合戦のような年末恒例のグランプリ有馬記念にやはり名物騎手、武豊の参戦は付き物だと思っているファンは案外多いのではなかろうか、、、、。残念!!

来年の二人の天才の新たな活躍に期待しよう!!

2011年12月12日月曜日

やはり良血の証

「絶景」(ブエナビスタ)の後は「生きる喜び」(ジョワドヴィーヴル)。母仔、姉妹同一G1制覇。新馬勝ち一勝のみでG1勝ちは史上最短など、数々の記録を作り上げ、又又昨日、阪神ジュベナイルフィリーズでニューヒロインが誕生した。その名は「ジョワドヴィーヴル」。

母ビワハイジはこれまでブエナビスタのみならず、牡馬でも注目されるスター馬を排出し続けてきたが、今回も又、その期待を裏切らなかった。そして偉大なる父、ディープインパクトがビワハイジとともに送り出した愛娘、ジョワドヴィーヴル。とにかく、バネが凄いそうだ。父譲りに違いない。

やはり、サラブレッドは血。遺伝子の紡ぎ出す優秀な血統にはかなわない。受胎後すぐから、昨日の結果が期待される程、父母の遺伝子による配合が抜群だったのだ。ブエナビスタはディープインパクトの父方の兄、スペシャルウイークの仔。父がディープインパクトに代わり、生まれたのが、この可愛いフワフワ娘、ジョワドヴィーヴル。

新馬のデヴュー戦では、遊びながらウロウロしつつ走っても楽勝。その時から期待はされたものの、G1では2歳牝馬最強のメンバーがそろう。初戦が初戦だっただけに真面目に走るかな???というところで減点され、4番人気だったが、真面目に走れば無敵の良血ぶりを発揮して、見事楽勝。

すでに「こんな走り方をする馬に巡り会った事がない。もの凄い馬かも、、、、」と福永祐一騎手も舌を巻いている。それにしても、ブエナビスタ〜レイヴディソール〜ジョワドヴィーヴルと続く、超一流牝馬のスターヒロインを次々と生み出している松田博資調教師。これまた、お見事な成果。その松田博資調教師を破顔一笑大喜びさせるこの孝行娘の誕生。もう可愛くて仕方がないような顔に見える。

可愛いウサギのような目をしたレーヴディソールから流星こそ違え、目元顔つきがブエナビスタそっくり、さすが妹という濃い血を感じさせるジョワドヴィーヴル。このポワ〜ンとしたおっとり顔のお嬢様に松田厩舎のニューヒロインの座は移ってしまったのだろうか。偉大な父ディープの七光りも受けて、もはやブエナをしのぐ人気者になりそうな予感が今からする。新たなディープ伝説の幕開けに期待したい。