2009年10月26日月曜日

恐るべし名ステイヤーの血

秋の3歳馬夢のステージ、クラシックの最終章が終わった。牝馬の3冠目、秋華賞では、レッドディザイアがついに念願のリベンジを果たし、ブエナビスタの牝馬史上3頭目の3冠馬への夢を蹴散らした。

レッドディザイアの父は3歳時、クラシック3冠目菊花賞の大輪の花を咲かせたマンハッタンカフェ。

距離的にはブエナビスタの父スペシャルウイークも3200メートルの春の天皇賞を制覇しているから、ブエナビスタにも距離の壁はなかったが、残念ながら最後の直線で馬群を抜け出す時に多少てまどり、わずかの差で今回はライバルのレッドディザイアに鼻差先着を許してしまった。

このレースはすでに皆様ご存知でしょうが、ブエナビスタとアンカツ騎手には残念なおまけまでついて、直線の斜行によりブロードストリートの進路を妨害したとの理由で降着となり、2着から3着になってしまった。

そしてアンカツ騎手には四日間の騎乗停止処分の裁定。名手アンカツ騎手もこの裁定には憮然とした様子で、あまり納得の行かぬ様子だったが、久しぶりの牝馬3冠馬誕生を期待していたファンには更に過酷な二重のショックで、今年の牝馬クラシック最終章は後味の悪い結果となってしまった。

牝馬クラシック最終章に続き、昨日は牡馬クラシック最終章の菊花賞が行われ、3歳牡馬の頂点を決める3000メートルの激闘が行われた。

まず予想通り、大器、大器とデヴュー前から評判の高かったリーチザクラウンが名手武豊騎手を背に先頭で大逃げを計った。

しかし、気性的にいれ込みの激しい難しい馬、リーチザクラウンは、パドックで周回するときから発汗。本馬場入場の時点で他馬より明らかに発汗が目立ち、結果終始力みがとれず、最後の150メートルぐらいで後続に捕まり、5着に沈んだ。

武豊騎手は「皐月賞の二の舞だけは絶対にしたくない!」とかねてより話していた。皐月賞ではこの名手武豊騎手をもってしても「アウトオブコントロール!」と匙を投げざるを得ぬ程、かかりまくり、鞍上の指示を無視して突っ走り続け、実力を発揮せぬまま撃沈したそうだ。

後方から行くと、道中他馬と並んだ時、掛かりまくるこの馬に、なるべくパワーロスなく3000メートルの長丁場を導くには、先頭で折り合いをつけながら他馬を離す、この乗り方しかなかったのだろう。

名手武豊騎手も打てる手はすべて打った上での敗戦。さばさばした顔をしていた。リーチザクラウンには、ぜひ更なる気性面の成長を促し、古馬でのリベンジを期待している。力は超一流であることは誰もが認めているんだから、、、、、。

ただ気がかりは祖父母の血統。父スペシャルウイークの母、キャンペンガールはサンデーサイレンスとの配合で、難産の末5頭目であり、最後の産駒となったスペシャルウイークを産み落とすまでに4頭の馬を産んでいるが、すべて気性難でほとんど出走も叶わなかった難しい子馬ばかりを産み落としていた。

キャンペンガ―ル自身も超激しい気性で自傷行為を繰り返し、とうとう競走馬としての才能は発揮せぬまま繁殖牝馬となり、最後にスペシャルウイークという歴史的な名馬を残し、産後すぐこの世を去った悲話の持ち主。

生産牧場、オーナーなどが未出走の馬ばかりを産み続けるキャンペンガールを見放さず、5回目の交配でサンデーサイレンスを選んだ執念が実った結晶がスペシャルウイーク。

どちらも気性が激しくうるさい祖父母を持つリーチザクラウン。遺伝子は隔世遺伝が多い。担当厩舎の課題克服への道は容易ではないだろう。

しかし、ぜひぜひ諦めないで頑張ってほしい。この魅力的な血統を持つ大器、リーチザクラウンが真に大人の風格を持った落ち着いた古馬にまでたどり着いたときの強さは破壊的だろうから、、、、。ファンとしてはぜひ観てみたいものだ。

今年の菊花賞を見終えてしみじみ思うのは、やはりおそるべし名ステイヤーの血。1着スリーロールス、2着フォゲッタブルはダンスインザダーク産駒。

ダンスインザダークは自身も菊の大輪を咲かせた名ステイヤー。ザッツザプレンティ、デルタブルース、そして今年はスリーロールスが産駒として同じ舞台を制して大暴れ。母方のダンシングキイはノーザンダンサーの代表産駒、ニジンスキーの血を受け継ぎ、力のある血統。

残念ながら鼻差で負けたフォゲッタブルに至っては、母はあの女傑、エアグルーヴ。弱いわけがない。この良血フォゲッタブルもようやく体が出来てきて、いよいよ血が騒ぎ始めたらしい。来年が楽しみな一頭だ。

余談だが、スリーロールスのオーナーはトヨタにゆかりの方とか。大の車好きで英国の最高級車、ロールスロイスと母馬の名前の一部をとって、愛馬にスリーロールスと名付けたとか。今、あまり元気のない車業界。きっとスカッとされたことだろう。

残念ながら5着に沈んだリーチザクラウンはスペシャルウイークの代表産駒と呼ばれるにふさわしい大器。昨年の伝説の新馬戦で優勝し、クラシック1冠目の皐月賞を制したネオユニヴァース産駒アンライバルドは、菊の大事な舞台で途中躓き、折り合いを欠いて、馬群に沈んだ。15着と惨敗したが、このままでは決して終わらない実力馬だろう。

神戸新聞杯G2でリーチザクラウン、アンライバルドを退け優勝したイコピコもマンハッタンカフェの代表産駒として今後期待される一頭。

それにしても菊花賞を制したスリーロールスも昨年の伝説の新馬戦でブエナビスタに次ぐ4着馬だったとは、、、、。同じ新馬戦から3頭(アンライバルド、ブエナビスタ、スリーロールス)ものクラシックG1馬が排出されたのは、JRA史上初の快挙とか。

この新馬戦で2着だったリーチザクラウンも含め、本当に「伝説の新馬戦」と呼ばれるに相応しい実力馬同士の激闘に改めてスポットをあてた今年のクラシック最終章。

ライバルがしのぎを削るレース展開は本当に迫力があり、観ていてワクワクし、楽しみが増す。ウオッカもダイワスカーレットという稀代の名牝とのライバル決戦があったればこそ、歴史に残る天皇賞秋の伝説が生まれた。

この菊の激闘には参戦しなかったが、まだまだ今年のダービー馬、ロジユニヴァースも控えている。本当に層の厚い3歳牡馬と牝馬達。これからの闘いが益々楽しみになってきた。

皐月賞は速い馬。ダービーは運の良い馬。そして、菊花賞は本当に力のある馬が勝つという。3000メートルの長丁場では、優れたステイヤーの血が勝ると言われているが確かに今年の菊花賞でもまざまざとそれは証明された。

レース前には本命を欠く乱菊と呼ばれていたが、終わってみればすべて名ステイヤーの素晴らしい血統に裏打ちされた3歳の良血牡馬が順当に勝ち上がった感がある今年の菊花賞。

おめでとう、スリーロールス陣営の皆さん。そして若き浜中騎手!!わずか鼻差で破れたフォゲッタブル、ブエナヴィスタ、又頑張ろうね。実力は紙一重なんだから、、、、。