2011年2月27日日曜日

おめでとう!!ありがとう!!そしてさようなら!!

2月27日。中山。ふたつの大きな出来事が感動とともにこの競馬場を包んだ。一つは昨年3歳にして有馬記念グランプリ馬に輝いたヴィクトワールピサ参戦の中山記念。勿論ヴィクトワールピサは一番人気に答え、文句なしの強さをみせて、堂々一着でゴール。3月26日にドバイで開かれるワールドカップに大きな夢を繋いだ。

彼を送り出す角居厩舎はドバイ挑戦は過去3度失敗。その時のウオッカはもうアイルランドで繁殖牝馬となり、静かにママになる日を待っている。そのウオッカが牝馬として64年ぶりのダービー制覇を果たし、歴史の扉を開いた陰には、角居調教師の勇気ある決断が光っていた。

牝馬3冠の第一戦、「桜花賞」でライバル牝馬ダイワスカーレットに破れたウオッカ。常識的な判断なら、牝馬にも勝てないウオッカを牡馬混合のダービーに送るのは腰が引けるに違いない。しかし、彼は違った。それほど、牝馬ウオッカの秘められた可能性を信じていたのだろう。このひとつの英断がウオッカの運命を変えた。

そして、牝馬として栄光のG1ー7勝。誰もがウオッカのドバイでの活躍に胸を踊らせた。しかし3度の挑戦とも夢果たせぬまま引退。そのウオッカに対して、角居調教師は、感謝しつつ自分の調教師としての力量を大きく磨いてくれたウオッカが残してくれた課題のひとつがドバイを含む海外挑戦だ、、、としみじみ語っていた。

ウオッカの引退を発表した昨年のその日、それはヴィクトワールピサの栄光の勝利インタヴューの日でもあった。角居調教師はその中で、ウオッカがヴィクトワールピサという後輩を育て、バトンタッチをしてくれた、、、と語っていた。寂しさと嬉しさが交錯して複雑な表情を浮かべていた角居調教師。

その言葉通り、ヴィクトワールピサは皐月賞を快勝し、ダービーには手が届かなかったが、果敢に凱旋門賞に挑戦した。7着という厳しい伝統の壁に阻まれたヴィクトワールピサ。しかし、陣営はこれを前向きに捉えた。

そして、そのとおり、昨年の有馬記念でグランプリホースに輝いたヴィクトワールピサは海外遠征で鍛えられ、実に堂々としていた。そして、昨日の中山記念G2など、当然勝つさ!!という横綱相撲。いささかの不安もない強さだった。

こうして馬にも世界の強豪と競わせることは大いなる経験として残ることを彼は自らの走りで証明した。今又、果敢にドバイに挑戦するヴィクトワールピサと角居厩舎のスタッフに改めて大いなるエールを送りたい。勿論、すでに調整中のブエナビスタやルーラーシップ、トランセンドなど日本代表馬すべてに頑張ってほしい!!

もう一つの出来事は、私の大好きな池江泰郎調教師の引退だ。すでに何度もメディアで報じられているので、その輝かしい経歴は述べる必要がないであろう。しかし、私がこの調教師に心惹かれた大いなる理由はそんな経歴ではない。その人柄と生き様だ。

どんな時もにこにこと、勝っても負けても悟りを開いているように淡々と話すコメントスタイル。勝負の終わった時点ですぐに前を向く潔さ。騎手や周りの人をいたわり、結果に言い訳をしない男気。そして、頑固なまでに通す池江流調教スタイル。誠実で朴訥な印象の中に光るおしゃれセンスなどなど、どれもこれも競馬を愛し抜き自分の職業に高い誇りを抱いている素晴らしい調教師の姿が見うけられ、大好きだった。

「ハッと気がついたら引退寸前だった!!」と最近コメントされた池江調教師。時の流れを忘れられる程、没頭し続けられる職業に恵まれた師は、ある意味幸運な星のもとに生まれた人だろう。

しかし、それも又、苦労を苦労と思わず、常に前を向いて進んだ師の哲学があったればこそ。晩年ディープインパクトが入厩し、数々の重賞を制覇する度に師はディープは「宝」だと讃えた。そのディープが栄光の走りを終え、静かにターフを去った同じ舞台を今、この素晴らしい調教師が去って行く。

息子さんもすでに同じ道を志し、立派な後継者となっている。引退し厩舎を解散したとは言え、かなり多くの有力馬は息子さんの元に旅立った。まだまだこれからも親子で見つめる夢の挑戦は続くのだろう。

ディープインパクト、メジロマックイーン、ゴールドアリュール、ステイゴールド、トウザヴィクトリーなどなど、枚挙のいとまがないほどの名馬で、ファンに大きな夢と感動を贈ってくれた池江調教師。いつまでもお元気で!!数々の素晴らしい感動をありがとう!!そしてさようなら!!