2009年12月9日水曜日

さようならキネーン騎手

今年のWSJSも激戦のうちに終わり、スーパージョッキーの世界の祭典も幕をおろした。

今年は最後まで、ヨコテンこと横山典弘騎手のラッキーイヤーとなり、世界のトップジョッキーを制して、日本代表が見事優勝を飾った。勿論、高い技を誇る横山騎手の実力開花。まさに彼の今年の集大成となった感がある。

さすがにレベルの高い世界戦。二位は香港のホワイト騎手、三位はイギリスのムーア騎手が入り、日本のベテラン、名手武豊騎手が4位。そして、今年限りで引退すると発表した、M. キネーン騎手が5位に入った。

キネーン騎手は競馬の主要国アイルランドを代表する名騎手であり、欧州各国は勿論のこと、日本でも古くからお馴染みの騎手。今年もシーザスターズで英ダービーや凱旋門賞などのG1を勝ち、その名声を轟かせていた。

シーザスターズはご承知のとおり、凱旋門賞ではジャパンカップ参戦の古馬、コンデュイット等を退け、強い強いレースを見せて欧州年度代表馬の座を獲得、わずか3歳で引退を発表した馬だ。

今年の欧州最強馬というより世界最強馬との評判が高かった彼だが、キネーン騎手の名エスコートなしには、語れないだろう。

今年、名馬コンデュイットを送り込み話題となったイギリスのスタウト調教師は、その昔、ジャパンカップを初制覇したとき、名馬ピルサドスキーの鞍上にキネーン騎手を指名。

キネーン騎手はピルサドスキーで見事にスタウト調教師の期待に応え優勝し、日本の人々にその名手の技を披露してくれた。

スタウト調教師はジャパンカップで唯一の2勝を誇る名調教師として、その名伯楽ぶりはホースマンの憧れの人。

数々の名シーンを残したキネーン騎手もすでに50歳。英ダービー、凱旋門賞を制覇して名馬シーザスターズを欧州年度代表馬に導き、その引退の花道を飾った今年、自身も潔く引退を発表してしまった。

でもやはり、何だか寂しい気がする。まだまだ、今年もWSJSで5位。英ダービーと凱旋門賞を制覇できる体力も気力も技も持っている彼。もう少し頑張ってほしいと願うのは、贅沢なのだろうか、、、、。

話はとぶが、私の住んでいる町はまさに馬と共生する町。クリスマスの寄付を募るのにも、赤い荷馬車を引いて2頭の馬に鈴をつけ、リンリンと鳴らしながら家々を訪れる。

オリンピック仕様の馬の競技場もあり、そこここで馬がのんびりと草を食む姿が見られる馬の町だ。だから厩舎も多く、馬に携わる人々の苦労も垣間みることがある。

初めは何にも知らない幼い子馬達。そんな子馬達と日々対話しながら育て上げる多くの人々の苦労。

ジョッキーはそんな人々の苦労と期待も背負い、卓越した技術で折り合いをつけ、レースを勝利に導く仕事。

一見華やかに見えるが、勝利を手にするまでの調教やレース研究などの仕事は朝も早く激務だ。そして、落馬したら生命の危機や生涯癒えぬ傷を負うかもしれない危険きわまりない仕事でもある。

特に速く走る馬程、気性が荒い馬が多く、その素質と危険性は正比例するといっても過言ではないだろう。

我々が見ているといとも簡単に乗りこなしているように見えるが、それは卓越した技術と人間性に裏打ちされた熟練の匠の技があるからだ。

集中力と日頃の弛まぬ精神や肉体の鍛錬なくして勝利の女神は微笑まない。だから、ジョッキーの人々は比較的小柄ながら、その身体能力の高さは驚くばかりだ。

世界の頂点とも言える欧州最高峰、フランスの凱旋門賞や英国のキングジョージを何度も制覇し、世界各国でその名人芸を見せ続けて来たキネーン騎手。

彼もきっと見えないところで、自己と向かい合い、大変な苦労をされてきたのかもしれない。

今は、引退し新たな出発をされるキネーン騎手。どうぞお体をお大事に!!日本で騎乗してくれたヤマカツスズラン、エアグルーブやロックドウカンプの心も込めて、「ありがとう。そしてさようなら、キネーン騎手!!」