2013年2月1日金曜日

さらば、アンカツ!!

 大好きなジョッキーの一人、アンカツ(安藤勝己騎手)の引退が報道された。中学から馬乗りとして笠松を舞台に大活躍した騎手。オグリキャップを中央に送り出した功労者でもあり、初めて地方から中央の競馬に移籍できた騎手だけあって、その騎乗ぶりは武豊騎手をして、「天才的」と言わしめる腕前。

 しかし、彼の魅力は天才的な腕前より、その飄々とした人間性にありそうだ。つまり、彼の男の美学が「ジタバタしても始まらないぞ!!」と周りの人々に思わせる。剛胆かつ華麗な騎乗ぶり。彼の手にかかれば「どうしてそんなにその馬走るの?」と他の騎手に不思議がられる程、馬が変わってみえるとか。

 引退理由は関節が固くなり、前程馬と一体になれないからだそうだ。思ったような、イメージしたようなレースができなくなったからだとか。自ら騎乗回数を減らし、半年以上前から自らの静かな幕引きを演出した。

 引退会見は勿論涙もなく、淡々と最後までアンカツカラーを通した。これが、彼一流の美学なのだろう。乗るからには一流ジョッキーのプライドにかけて、華麗に存在感豊に乗らなければならない。彼自身が一番自分に厳しい採点を下し、自らを引退に追い込んだらしい。

 その清々しく、飾らない引退会見の姿を見て私は思った。本当に残念だなあ、寂しいなあ、、、と。ただ単に上手で巧い騎手なら大勢いる。しかし、彼のように、まさにいぶし銀のような味とダンディズムを感じさせる騎手は少ないだろう。その感性の豊かさと信じられない程の自然体。これこそが、磨かれ抜いた究極の一流の証なのではないだろうか。
 
 多くの名馬が彼の手綱から生まれた。しかし、やはり2008年のダイワスカーレットとのコンビが一番印象に残る。痛快な逃げ。そして、38年ぶりの牝馬有馬記念制覇。ウオッカとの天皇賞。どれも歴史的なシーン。そして、ブエナビスタの活躍へと進んだその勇姿は今でも目に焼き付いている。

 さらば「ダービージョッキー」アンカツ!!といってもお別れはしません。なぜならば天才的な騎乗。庶民的な物言い。おっさんかと思えばスタイリッシュでダンディーなスーツ姿。意外性、親しみ易さと高いプライド。様々な魅力に溢れた貴方には、今後貴方独特の表現でレースをわかり易く、親しみやすく、ユーモアを込めて解説してほしいからです。

 ビリーブ、キンカメ、ダイワメジャー、ダイワスカーレット、ブエナビスタ、様々な名馬とともに積み上げたG122勝。短期間でのこの実績こそがアンカツの凄さを物語っています。それらの名馬もきっとファンと同じ言葉で名手アンカツの引退を惜しみながらこう言うでしょう。「数々の素晴らしい騎乗をありがとう。お元気で〜〜〜!!」と、、。